chatmonchyチャットモンチー in Zip★Tune★Party@渋谷O-West


3つとも同じようなガールズパンクバンド。なんか似たようなバンドが続く。ボーカルは何故かどのバンドも似てる。小さくて元気いっぱい派手目メイクのノリのいいお姉ちゃん。そして客は、高校生っぽい男女が多数。Zipperって雑誌知らないけど(何の本?)、たぶん中高生向けぐらいの雑誌なんだろう。ちょっと場違いな所に来てしまった感じ。後ろの方から静かに観賞。 今日は新しい発見があった。ライブは汗かいたりするからツアーグッズでタオル打ってたりタオル首にかけてる人は珍しくないけど、サビなんかで盛り上がった時にそのタオルを持った手を上に上げてタオルをぐるぐる回すのだ。俺は初めて見たけど、こういうの流行ってるの? さすがに20代後半以降ぐらいの落ち着いた人達はやってなかったので、若い子達の流行りって事なのだろう。あと凄かったのが床の揺れ具合。若い子が思いっきり縦ノリでピョンピョン跳ねる跳ねる。まだ新しいコンクリートのしっかりした建物なのに、ちょっと恐くなるくらい床が揺れてた(あのぐらいの揺れは想定内なんだろうけど)。震度3、いや4? 当たり前のように頭上にダイブもしてた。映像なんかではこういうの良く見るけど、実際見るの初めてかも。10代の若さってすごい。ステージ前の10代と、後方の20代後半以降とはっきり層が分かれてたのも面白かった。水と油が分離したみたいに別世界だった。
若くて明るいノリのパンクグループバンドが3つ(ホイフェスタ・少年カミカゼgollbetty・midnight pumpkin)が終わり、ようやくチャットモンチーchatmonchyの出番。なんか場違いな感じ。ジャンル違うよね、どう見ても。明らかに仲間外れ。今まで壁際や後方にいたファンらしき人達がステージ前に集まりだす。ちょっとした民族移動。いつものごとく静かに登場する3人。絵莉子は、バックプリントの紫のTシャツ、黒っぽいジーンズ、そしてスニーカー。いつもだいたいそうだが、初めて見る女性客なんかから必ず「かわいい」っていう黄色い声が出る。細くてやわな体から、あんな音出すなんてここで想像できる人がいるだろうか。でも、今どきかわいい子がうるさいギター鳴らしたり凄いテクニックでギター弾いたりするのも珍しくないかな。1曲目「ハナノユメ」が終ると、客の感想は「かわいい」から、「かっこいいね」へと変わる。子供っぽいあどけなさと、無口ぶりは相変わらず。冒頭のあいさつ「チャットモンチーです。」しか話してないような、、。 真っすぐ向いてる時に集中しているのか寄り目になったり、強いフレーズの時には顔を揺らしながらシャウトしたり、ついつい細かい部分を観察してしまう。目を閉じて歌う表情もかっこいい。でもちょっと後ろ向いたりすると小学生にしか見えなかったりするギャップ。近いから、たびたび合う目線。このぐらいのライブっていいなぁ。途中で知らない曲ひとつ。アルバムに入る曲だろうか?
●セットリスト●1.ハナノユメ
2.さよならGood bye
3.恋の煙
4.湯気
5.新曲
6.恋愛スピリッツ
最近お気に入りが「さよなら Good-bye」という曲の歌詞。
「本物よりもきれいなウソ、 本物よりもきれいな言葉
かきあつめては、まき散らし、 かきあつめては、飲み込んだ
味のないガムみたいな、吐いて捨てるほどの世界、、、
あと、「まどろむ景色、まつ毛の上にのっかっている」っていう所もセンスを感じる。
このバンドは3人とも作詞するのだけど、この歌詞はベースの福岡晃子が作詞。(作曲は全てギター&ボーカルの橋本絵莉子)。最後に新曲「恋愛スピリッツ」。アカペラのイントロは場を一気に静かにする。全く楽器ナシの完全アカペラというのはナマで聞くとなかなかかっこよくて、静かに聴き入ってしまう。 chatmonchyの曲はイントロがそれぞれに特徴的だったりするのだけど、この曲は特にインパクトありすぎ。イントロだけで”おっ!”と驚かせる事の出来る曲を作れるのはほんとすごいと思う。歌詞も変に背伸びしてなくてそのまま自分達の体からこぼれたような言葉が胸に響く。うわっつらの言葉だけを並べてかっこいい歌詞を書いたりしない。これって以外と難しいんだけど、彼女達は彼女達の言葉で歌えている。そこがかっこいい。 福岡晃子が最後のMCでいつものように「言い残したことはない?」と、絵莉子に振るんだけど、いつものごとくギターのチューニングに専念しててまるで聞こえていない様子。 最後は「恋愛スピリッツ」で締めくくる。
MC短めで、あっという間のライブだったけど、まだまだ夢から醒めそうにはない。今日はMCがすべり気味なのがちょっと気になった。いつもならドラムの久美子が司会的な役回りで面白い話や話題ふって、ベースのアッコがフォローしたりつっこんだりする感じなのだが、面白い話を用意してなかったのかあまり盛り上がらなかった。客層がいつもと違うから? 先の3バンドを見て場違いだと気付いてる? 噛み合ってなかったね、今日のMCは。チャットモンチーもこれで5回目?さすがに見慣れて聴きなれて新鮮度は少し薄れてきたけど、やっぱり何度行っても”生”はいい。”ライブ”はいい。行ける範囲でまだまだ通います。ビッグになったらこんな小さな箱ではなかなか見れなくなるだろうし。次はいよいよワンマンだ。アルバムが出る前から追っかけて、いよいよワンマンというのも感慨深いものがある。そういえば、今日の主催Zipper誌での連載が7月から始まるらしい。7月5日にはいよいよフル・ファーストアルバム「耳鳴り」も発売になる。まだまだメジャーになった感じはしないけれど、このアルバムでブレイクするか? 楽しみ半分(どのぐらい高い売上げをあげるか)、恐さ半分(ファンが増える。ライブ会場が大きくなってしまう)だ。


チャットモンチー  http://www.chatmonchy.com/
   ↑のブログ  http://blog.sonymusic.co.jp/chatmonchy/



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にせんねんもんだい「それで想像する ねじ4こ」@渋谷O-Nest

初めてのO-Nest。nestの意味って巣?隠れ家? EastやWestと違って看板も見当たらず、入り口がどこにあるのかちょっと迷う。コンビにの左脇にエレベーターがあって、そこから6Fへ。受付済ませると、前の人たちがすぐ脇のラウンジのようなテーブルがいくつかある所に行くので自分も同じく空いてる所に座った。隅にちょっと機材がありスクリーンに映像が写ってる。え、こんなところでライブやれるのと思いつつ待ってたのだが、違ってた。いったんドア抜けて屋外の螺旋階段を下に降りると、そこにまた入口がありライブスペースが。客席よりちょっと高くなってるだけの狭いステージ、柵もなくて密接度高し。客席も狭めで下北シェルター程度。キャパは200ぐらいか。まさに隠れ家って感じの心地いい空間。女性バンドだからか、かなり男が多め。開演まで床にぺたんと座って待てるぐらいのパラっとした客入り。選択失敗したかなとちょっと不安になったが、このぐらいのゆるりとした雰囲気のライブハウスも悪くない。落ち着いてドリンク飲みながら楽しむ事が出来るんだから。
今日は3バンド出演。しょっぱなは、女性2人組。ギター&ドラムの「ひめのまさこ」。不規則にフェイントをかましながらもハードに炸裂するドラム、ひたすら続くループサウンド、きしむようなギター。無機質なサウンドの中にかいま見せる色気。ギターの子がボーカルを兼ねているのだが、彼女の口ずさむ”アウト、アウト、アウト、アウト、、、、”、このエンドレスなループフレーズが耳にこびりつく。なぜか正面向かずに真横向いて歌うのは恥ずかしいから?(マイク自体が横にセットされている) たまに後ろ向きでシャウトしたりなんかしてるし。正面向かずに歌う人って初めて。と、不思議に思いつつ見てたけど、後で理由判明。ステージの奥行きが浅いため、エフェクター用のフットペダルなんかをいくつも設置すると横向きにならざるを得なかったみたい。それともステージの広さに関わらずいつもこういう配置でやってるのだろうか、、、。
次のバンドは男性3人組「gnawnose」。客席部分の後方左隅にドラムをセッティングし、その周辺にギターとベースを従えてのステージング。同じドラムを共用できないからこうしたのだろうか。客と同じ目線の高さで、あり余るエネルギーを無差別に放出する3人。体育会系ノリではじけてるドラム、ヤクでイカれたような目が逝っちゃってる危ないギタリスト、頭に風船がたくさん入った大きなビニール袋をかぶって歌うコミカルなベーシスト兼ヴォーカリスト。なんか良くわからんけど、パンクなプレイっぷり。破綻一歩手前のグルーブは良くも悪くもギリギリ。サイコパス、精神分裂、ヒステリック、アナーキー、溶けた脳みそ、、、、いろんなイメージが頭に浮かぶ。たまにこういうの見たり聞いたりするとかっこいいとも思うけど、普段聞こうとは思えない。
トリはもちろん”にせんねんもんだい”。かわいい女性3人組。ギター、ベース、ドラムのオーソドックスな3ピース。しょっぱなからノリのいいドラム。ハードなプレイに、ふり上がるポニーテール。ループ、ループなエンドレスノイズ。ヒステリックなギターは意味不明でフレーズともとれない音の断片を掻き鳴らす。この音だけ聴いて、これをかわいい華奢な女性3人がやってるとわかる人がいったい何人いる? のはメロディで聴く音楽ではなく、しつこくループするサウンドに体を委ねるって感じ。ツーバスの様なわざと外すように跳ねるドラムがかっこいい。自分の知ってる音楽の範囲でいうと根底はブンブンサテライツ(Boom Boom Satellites)に近いかも、、、。リズムありき。ギターやボーカルではなくドラム&ベースの音に体が反応する、、、いや従わされる。脳のどこかにある秘密のスイッチでも押されたかのように、頭が、体が、上下左右する。曲というよりも、脈拍や心臓の鼓動みたいなもんだね。耳で聴くんじゃない、体全体で聴くみたいな感覚。 ボーカルはあるにはあるが飾り程度で、基本的にはハードなノイジー3ピース、ガンガン楽器を掻き鳴らす、あんなかわいい顔して。ギターの子が特に美人だった。日テレのアナウンサーに似てると思ったけど名前まで思い出せず。あんなおとなしそうな子があんなギタープレイをするなんて誰が想像できる。っていうか、彼女にあんな事を促した動機って何?気になるなぁ。後はドラムのはじけ具合も凄かった。パンクしてるなぁって感じ。ベースはよく見えなかったのでノーコメント。前半ほとんどメロディなくてちょっときつい部分もあったけど、アンコールの曲ではかっこいいギターリフ、キャッチーなメロディも入ったりしてなかなかかっこよかった。キャッチーなメロディなんておまけみたいな要素なんだろうし、そういうのでヒットしようなんて思ってなさそうなのも硬派で潔い。色気を出さずにこの路線で突っ走れば、日本より外国でビッグになってそうな気がする。ファンになるかは微妙だけどなっちゃいそう。人が少なめなのも落ち着いて見れるしプレミアム感があっていい雰囲気。決して一般層まで広がらないマニアックでディープな世界だけど、本能を刺激してくれる数少ないバンド。理屈は必要なし。聴いて気持ちよくなれれば。
終わって螺旋階段を上り入口のロビーに戻るとかなりの人だかりが出来ていた。ベースの子が1人で何かすごいベースソロをやっている。メンバー2人が脇で見ている。結構長い時間超絶ソロプレイを披露してた。一体なんのパフォーマンスだったのだろうか? 後でわかったけど、最初にプレイした2人組”ひめのまさこ”はにせんねんもんだいのギターとドラムの子の2人で組んだユニットなんだってね。なんかかぶってたからよくわかんなかったよ。そう言われれば、確かに似てたなサウンド。当たり前だけど。そういえば見に来たきっかけ言ってなかった。前にいろんなブログをぶらぶら覗いてて、”にせんねんもんだい”、”Kiiiiiii”、という未知なるバンドの評判を目にして何となく気になってたら、その少し後にその2バンドが出てるガールズ・パンクバンドのライブ企画を偶然にも発見。聴いた事もないバンドなのに、”ガールズバンド”に弱い私は迷わずチケットを取った。だが、その後外せない用事が発生したためやむなく棄権。確か昨年の12月。渋谷クワトロだったかな。せっかく2つのバンドを一度に見れるチャンスだったのに。あきらめきれず、改めてトライしたというわけ。1つ片付いたので、次はKiiiiiiiだ!(ちなみにiは7つ)。ゴールデン・ウィーク明けのワンマン。既にチケットは取ってある。どんなやつら(2人組)、どんな音楽なのだろうか?わくわく、、、。


にせんねんもんだい  http://www.nisennenmondai.com/
kiiiiiii  http://www.kiiiiiii.com/



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Bonnie Pinkボニーピンク フリーライブ in Earth Day TOKYO 2006@代々木公園野外ステージ



原宿から渋谷公会堂へと続く代々木公園の中にある大きな通り。その中ほどにある野外ステージで、アースデ−のライブがある。フリーライブ。つまり無料。降りそうだけどなんとか降らずに持ちこたえてる天気。ちょっと肌寒い。少し早めに着くと、”GOCOO”という太鼓ばかり(5名×2列ぐらい)のバンドが演奏してた。太鼓アンサンブル? それも女性ばかり。露出の多い水着だかレオタードだかよくわからない派手な衣装の若い女性集団。10名で太鼓たたくとさすがに凄い迫力。すごい盛り上がりだった。電気を使わない楽器というのも、アースデーらしくてなかなかGoodだと思った。この時点でかなり人がいて前の方に進めなかったのだが、美女太鼓軍団が終わった後の人の動きのスキを見てなんとか潜り込み、センターの前から3列目ぐらい(もちろん立ち見)のいい位置を陣取る。ステージ切替えの間にぞくぞくと客は増え、密度が高まる。ステージを良く見ると後ろの壁には、廃材をつなぎあわせて作った木のピースマーク。猫のひげのようなものがついててかわいい。
フリーライブにしては結構多めのサポートメンバーを従えて、ボニー登場。ジーンズの上から赤黄青のストライプ系のワンピース。肩から腕に黄色い薄手のカーディガン。春らしい、爽やかな格好。ベース、キーボード、パーカッションはいつものツアーメンバー。始めて見るのはドラムとギターの2人。一緒にプレイできて嬉しいとボニーが言ってたベテランっぽい中年ドラマーと、まだ若い感じの爽やかなギタリスト。この5人に途中からホーンセクションとして3人も加え総勢9名の大所帯。フリーのイベントなのに贅沢だなぁ。4人ぐらいでさらっとやるのかと思ってたけど、来て良かった。新しい定番「So Wonderful」でライブスタート。この曲がかかってのらないはずがない。久しぶりのライブとあって、客からは大きな歓声とたくさんの掛け声。ボニーも久しぶりのライブを心から楽しんでいるみたいで、いつも以上に表情が明るくいい動きしてる。MCではフレンドリーによくしゃべる、よくしゃべる。サポートメンバーもいい雰囲気。野外というのも気持ちいい(かなり弱い霧雨が降ってはいたが)。あまりの客の反応の良さに、彼女が気持ち良く歌ってるのがこっちにも伝わってくる。途中ちょっと歌詞が飛んじゃって、歌い終わった後に「歌詞忘れちゃいました!」って明るく告白されても全然許せてしまう。その後、スローなアレンジの「Fish」。間奏の時、指にパイプのような物をはめてスライドしながら鳴らすギターの”にゅーーぅーぅうーん”っていう揺れのある音がかっこいい、気持ちいい。映画の宣伝をさりげなくやった後には、当然主題歌の新曲を初披露。”Love is Bubble”。たたみかけるようなアップテンポでゴージャスな曲。ボニーの曲の中では過去最高体感速度のスピード感が最高にかっこいい。あっという間にSo Wonderfulからこちらが新定番となるか?他に何曲かやったあと、最後は、お約束的な曲”Heaven's Kitchen”で締めくくる。これでも充分な内容だったのだが、サポートメンバーが立ち去った後一人残ったボニーが向かったのはマイクより少し後方にさりげなくセッティングされていたキーボード。ミュールを脱ぎ捨て、弾いたのは予想通りの”眠れない夜”。ピアノ音一本での静かなバラードがまたいい。なんとか本降りにならず霧雨で終わり、自称晴れ女も伊達じゃなかった? いやー、無料だから時間短めだけど、すごい充実した内容だったから\2000ぐらいの価値はあったな。
今の所、次のアルバムのアナウンスもないしこれからの活動がいまいち見えてこないボニー・ピンク。夏ごろにアルバム出して、秋以降にツアーか?


Bonnie Pink  http://www.bonniepink.jp/
●アースデー東京2006  http://www.earthday-tokyo.org/
●女性和太鼓集団”GOCOO”  http://www.gocoo.tv/



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ナイロン100℃「カラフルメリィでオハヨ」@本多劇場


久しぶりの本多劇場。古臭い劇場だけど、不思議となんか落ち着く。そしてなんだかんだ言いつつ、ようやくの初ナイロン。とはいえ、だいたい見た事ある役者ばかり。初めて目にするのは、犬山イヌコぐらいか。噂通りのスタイリッシュなオープニングのキャスト映像。舞台装置の坂にうまく合わせて作ってあったりして面白い。主宰のケラが父親を看病した事をきっかけに作った唯一の私戯曲。何度も再演を繰り返しているらしい。痴呆のような父親と、夢で病院から逃げ出そうとする子供の自分が対比的に平行しながら描かれる。病院を一緒に脱出しようとする5人の仲間。だがそれも空想上の事のようで医者や看護婦達には見えていない。脱出を試みるもうまくいかず、次第に消えていく仲間達。
こういうふうに筋っぽい所だけを書いていくとまともなストーリーに思えるが、実際はかなりどたばた横道に逸れたり訳の分からないナンセンスギャグやベタな笑いをかましたり(劇中セリフにも出てくるけど、”ドリフ”っぽく感じた)、見る方は多少煙に巻かれながらも話はコロコロと進んでいく。いかにも彼らしい小劇場チックなお芝居だけど、笑いの方に偏向してるキライがあって好き嫌いは分かれそう。もう少しストーリーの方に割いてくれればなぁ。くだらない笑いが多くを占めつつも、ケラがこの芝居に込めた想いが端々に浮かんでは消える。父への感謝?父の思い出?、父とだぶらせた自分の姿?演劇はメッセージの乗り物ではないと誰かが言った。であるならば、ここにあったものは、、、。 ばかばかしい笑いが多い中で、これはいいセンスしてるなと思ったのがこれ。みのすけが看護婦や医師に追われて逃げるシーン。武器や飛び道具を持った追っ手に行く手を阻まれ、そこで”暗転し”ぼこぼこに殴られたり、銃で撃たれる効果音が鳴る。あ、捕まっちゃったか、、と思ってると、明るくなりみのすけが現れる。そして言うセリフが、「危機一髪だった!」。同じようなシーンがリピートされて次が「一時はどうなるかと思った!」。 最後は派手にミサイルが爆発する音がした後に、「死ぬかと思った!」。これには爆笑した。うまいなぁ、この言葉遊び。演劇ならではの演出。見事に言葉を逆手に取ったね。
キャストは贅沢の一言。まぁ、小劇場に興味ない人や初めて見る人に言っても、「えっ、どのへんが?」とか言われそうな気もするが。一番インパクトがあったのが、初見の犬山犬子。見た目きれいというわけでもなく、ちょっと障害のある難しい役だったけど不思議なかわいらしさがあってかなり興味引かれた。初めて見たけど、独特のキャラクターを持ってる感じで、今日みたいなちょっと変った役ではなく普通の女性を演じてる所を見て見たいと思った。 次は、やっぱり村岡希美、峰村リエ。この2人は何度も見てるけど、ハズレがない。 今日は特に村岡希美が何役もこなしてて大活躍。胸の部分が注射の形した服を着た看護婦には笑った。何度聞いても好きなちょっと低音の効いた特徴的な声、気持ちのいいセリフまわし。切れ長の目があいかわらずかっこいい。峰村さんは一番収まりのいい母役をオーソドックスに振舞う。でもこのオーソドックスがただものじゃないんだよね、彼女の場合。この良さ、言葉じゃなかなか伝えられない。近所のおばちゃんのように見えて、実はオーラが漂ってる。好きだなぁこの感じ。 単純にカッコ良かったのが、山崎一。バカバカしいボケ老人役もさすがのいい味出してたけど、中盤しんみりとした真面目な一人語りがめちゃくちゃ心に沁みた。TVや映画含めて幅広く活躍してるだけの事はある。あんな大人になりたいと、背中を見て感じた。 期待してた馬渕***は、何か違和感のある女子校生役。年齢的にちょっと無理あるか?カツラの色も形もまるでマッチしてなくてなんかおかしかったし。出番少な目だったけど、ピアノを弾くシーンなんかもあって(本当に弾いていたのか?自動演奏?)それなりに見るところはあった。ピアノと言えば、大倉孝二さんも弾くのだが、これが超テクニシャンなプレイを見せるのだが、自動演奏なのか本当にピアノ弾けるのかちょっと気になった(まぁ自動演奏だと思うが、、)。 植木夏十(←なんて読む?)さんに始めの内気付かなかったけど途中で思い出した。プリタク 「HERO」で水商売の役やってた人だ。今日は馬渕の女友達役なんかをやってたけど、すぱっと一本抜けたものがあって気持ちのいい演技だった。結局、今日は物語を見るというよりは、好きな役者を見に行ったという感じ。しんみり来るところもあるのだけど、難しい事考えず笑って笑って笑って、最後にちょっとほろっとくるみたいな感じだったね。


●ナイロン100℃  http://www.sillywalk.com/nylon/



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ピナ・バウシュ”ヴッパタール舞踏団”「カフェ・ミュラー」&「春の祭典」@国立劇場大劇場


初めての国立劇場正倉院を思い起こさせる外観。新国立に比べれば地味だけど、歴史の重さのようなものを感じる重厚な造り。中に入ると新国立とは違い、和物の伝統芸能を主体としてるためか、紅白のちょうちんやクラシックな内装など、いかにも日本的。階段&ロビースペースの壁にはなんかすごそうな大きな絵がたくさん、大きな吹き抜けが気持ちよく、天井のちょっと古めかしいでかいシャンデリアには何となく違和感も。 ¥15000のS席なんて手が出るわけ無く、今日は一番安いD席のチケット(¥5000也)。入ってみると最後尾の壁際、かなりの膝元の狭さ。小さな車の狭い3列目シートみたいな感じ?イスじたいは背もたれも大きく座り心地がいい。舞台から遠いのは分かっていたので、今日は双眼鏡をばっちり持ってきた。前半のカフェ・ミューラーはダンサーが散らばってて覗いたりはなしたり忙しかったけど、春の祭典の方は群舞を斜め上から俯瞰するように全体のダイナミックな動きが見れて、これはこれでいい席だったかも。もちろん間近で見れば、すごい迫力なんだろうけど、、、。それには3倍近いお金が。
●1、「カフェ・ミューラー」
両サイド、大きなガラスの壁が印象的なセット。舞台は大きな喫茶店といった感じで、丸テーブルとイスがたくさん。暗い照明の中(つまり静まり返った夜)、両脇からふらふら、よたよたと現れる幽霊。しょっぱな、もうかなり高齢(70ぐらいか?)の振付師・ピナ・バウシュ自身が、その幽霊役で入って来るのだが、ワイヤーか何かで吊られてうっすら浮いてるんじゃないかと錯覚するような浮遊感のある動きにびっくりする。双眼鏡でお顔を拝見すると、背が高くやせ細った体つき、鼻が高く深くシワの刻まれた顔は、まるで魔女のよう。ガラスの壁に何度もぶつかったりする様が行き場なく彷徨う魂の哀愁を感じさせる。客席に向かって微妙に開いてセットされた両サイドのガラスの壁(つまり上から見ると台形)に、その姿が計算されたかのように対照的に左右2つ写るのがきれい。湖に写る逆さ富士みたいに(例えが悪い?)。基本的には、幽霊があてもなくふらふらカフェの中を彷徨い、それに驚いたりなんとかしようとする人間の姿、そんな構図。もの悲しいトーンが全体を覆う。ゆるーくてダンスとも芝居ともつかない穏やかな内容で、さすがに少し眠くなったけど、終盤、抱き合う男女のカップルとそれにかまう幽霊のしつこいくらいにひたすらリピートされる動きが面白かった。悲しいまでの繰り返し。抱きかかえてはすべり落ち、キスをして抱きかかえては、、、。だんだんと早くなっていく3人のリピートがより大きくより深くなる気持ちを表してるかのようで、引き込まれた。何より、ピナ自身がこの歳になってもまだ踊ってるのにも驚いた。
面白かったのがカフェ・ミューラー終了後の休憩時間。 幕を下ろしてセットチェンジをするのが普通だと思うけど、幕は降ろさず舞台転換をそのまま見せるのだ。何か意図がある? おかげでアクリル版かと思っていた透明の壁(高さ3mぐらいもあったし1枚が大きいから、まさか重たいガラスを使ってるとは思わなかった)が大きな一枚ガラスだとわかった。カフェ・ミューラーのセットが片付いたと思うと、今度は舞台いっぱいにシートのようなものを広げ始めた。何をやらかすかと思ってると、そのうち大きなコンテナのようなものが8つぐらい入って来てその中に入ってた土をシートの上に敷き詰め始めた。黒っぽい土だったから、適度に湿ってるということか。この時点では、わざわざ土を敷き詰めたりして、さすがにやる事が違うねぐらいにしか思ってなかったのだが。
●2、「春の祭典
前半が”静”なら、後半の「春の祭典」は”動”!。驚天動地の”動”ってぐらいの”動”。静かでもの悲しいカフェから一転、荒々しいハリケーンの中へと放り込まれる。何もない、ただ柔らかい土が敷かれた広い舞台で男女各10名ぐらい、つまり20人近くの大所帯の集団ダンス。迫力のあるクラシック調の曲の中、曲のアクセントにシンクロするような大きな動き。例えば女性グループが固まってユニゾンしたりするから、その圧倒的な躍動感に息を飲む。一方で男性グループ、一方で女性グループがそれぞれに攻め立てるように力強く動く。シンプルなシルクっぽい透けたベージュの衣装が次第に土で汚れていく。産まれた時は純粋でまっさらな赤ちゃんが、成長していく過程でいろんな経験をしていい意味でだんだんと色がつき汚れを纏いながらも(人間らしくなりながら)大人になっていくみたいに。顔や手足も汗と土が混じりあい汚れ、さらに迫力が増す。男女入れ子で輪になってのダンスや、ばらばらに入り乱れてのダンスがあったり、ぴょんと女性が男性の肩に吸い込まれるように飛び乗ったり、高い席から俯瞰するように見たとどまる事のない絵は壮観の一言に尽きる。カフェ・ミューラーはちょっとかったるくてどこがそんなに凄いんだろうなぁと正直思っていたけど、春の祭典見始めて一気に目が醒めたよ。もう、単純にストレートにかっこいい。大勢でユニゾンしてるから派手にかっこいいってのもあるんだろうけど、やっぱり振り付けがかっこよかった。特に両腕を大きく降りおろす振り付けは脳裏に強烈に焼き付いた。 最後、他のダンサーに周りを囲まれた中での、一人赤い衣装の小さな女性のソロ。衣装のベージュ色、肌の色、土の茶色など同系列のアースカラーの中で、赤が引き立つ。血、、、生きてること、、赤色を見てそんな事を考える。肩ヒモが落ちて片乳露出というハプニングがあったが(それとも、そういう演出?)、まるで動じることなくそのまま続け、これでもかこれでもかと力をふりしぼるような熱いダンスにこっちも熱くなった。
終わってみると、当然ともいえるスタンディング・オベーション。あれだけ凄いもの見せられたら自然とそうなっちゃうよね。良く考えたら、スタンディングオベーションって初体験だ。長い長いカーテンコール、5回ぐらいあった。いやー、ほんとに見にこれて良かった。これで5000円は安い。S席の¥15000も決して高くないと思えた。あの年だから、ピナ自身が踊るのを見るのだってこれが最後になりそうだし、春の祭典だって20年ぶりの2回目だから次はありえなさそうだし、タイミングがいいよ俺。高いけどS席でもう1回見たいぐらい。だんだんと洋物に足を取られつつある今日このごろ。次は6月、ヤン・ファーブルだ!


ピナ・バウシュ  http://www.pina-bausch.de/



★他の方の感想 

PE'Z REALIVE Tour 2006 春 〜あなたの明日に疲れを残さないために〜@HEAVEN'S ROCK新都心


PE'Zと言えば、最近テレビで何気にBGMとして流れてるのを良く聞くようになった。知らない人でも有名な曲を聴かせれば意外と「あれ?なんか聞いた事ある」ってのもしばしば。じわりじわりと知らない内に浸透してきてる感じするなぁ。世界進出もしたし、一般レベルでも大きくブレイクする日も近い? 
雨の中、2度目のPE'Zのライブへ向かう。小さなライブハウスだから整理番号200番台前半でも、あまりいい場所は取れない。といっても狭いから一番後ろからだって、遠くはないんだけどね。SOLD OUTしてる割には、ぎゅうぎゅうに詰め込んでる感じではなく、この前のGo!Go!7188の時より人と人の間に余裕があって見やすかった。明らかに女性率の高い客層。8割女性か? 暗転して、勢いのある曲「夢ノエンアレ」でライブスタート。ヒイズミマサユ機の「巡る巡る夢ノエンアレ、廻る廻る夢ノエンアレ!」という掛け声で、こぶしが挙がり一気に盛り上がる。私が注目するのは、キーボードのヒイズミ氏。二股かけてた東京事変からも離脱し、世界進出したPE'Zに全力を注ぐ(だよね?)。格好は、この前のツアーと同じで孔雀の羽のついたかわいい帽子と丸っこい形の大きなサングラス。小さな頭を上下に、時に左右に大きく揺らしながら、小さめのキーボードに襲いかかるかのようなハードプレイ。すごい小刻みなアルペジオの早弾きをしたかと思うと、今度はロボットのようなかくかくした動きでふざけた感じのプレイをしてみせたり、5人の中で一番見てて飽きない。最大の大技(だと思う)、スリーシックスティ(スノーボード風に)つまりジャンプして360度1回転してまたキーボードを鳴らす荒業も2回ぐらいやってくれて、もう言うことなし。自分の中では、キース・エマーソン、小室哲哉に次ぐ憧れのキーボードプレイヤー。今日は背の高い人に視界をさえぎられる事もなく彼のプレイを堪能。前半はアルバム「千歳鳥」の曲をメインにノリのいい曲目白押し。間に2,3度MCを挟み、客のリクエストに答えたり、客にくじひかせてメンバーの中から1人選んで軽くトークさせたりして小さなライブハウスならではのコミュニケーションを楽しみ、後半はメロウな感じの曲を3曲ほど続け場を湿らす。最後に、勢いのある3曲で否応無くクライマックスへ導かれる。アンコール無しはちょっとさびしいけど、終わっても頭の中では曲がループし、体には心地いい疲労感が残っている。いつも終わった後にもらっている1ドリンクを、ちびちび飲みながらライブハウスを後にした。
●セットリスト●1.夢ノエンアレ
2.FREE BIRD
3.BET-300
4.さらば愛しきストレンジャー
MC
5.Let it go
6.Wonderful Days
7.HEY!〜都でGO☆GO〜
8.HEY!JORDU!
9.BIG EAR
MC
10.JAWソロ〜Recado Bossa Nova
11.タマネギヴァージン
MC
12.MANATE〜愛手〜
13.ハリヨの夏
14.海に降る雪
メンバー紹介
15.インディーズメドレー〜Hale no sola sita
MC
16.collective mode
17.SPIRIT
18.Let's Work
正直あまり「千歳鳥」というアルバムを聞き込んでなかったんだけど、ライブで聴いてかなり好きになった。ライブパワー恐るべし。ライブから2日ぐらい経ったけど、気が付くと”BET-300”って曲が何度も頭の中で鳴ってるんだから。


●PE'Z  http://www.worldapart.co.jp/pez/



★他の方の感想 

風琴工房「砂漠の音階」@ザ・スズナリ


普段なら自由席があるところまでせりでた、良く出来たセット。北海道にある大学のとある研究室。時代は昭和初期? 木造の校舎、センターに大きな机、その上には古めかしい黒電話があったりする。周囲にはソファーや書棚、コート掛けなど。黒い壁と、正面奥にある白い枠の大きな出窓が印象的なセット。史実を元にした話だけに、リアルなセットがしっくりくる。
人工雪の結晶を作った実在の科学者・中谷宇吉郎の実話を元に、大学実験室での一日を描く。若い実験者達や秘書、物理学専攻でアメリカの一流大学にも在籍していた昔の研究仲間、忘れた弁当を届けに着た妻など、多くの登場人物を交え、研究室での何気ないやりとり。その中で語られる研究への熱い想い。突然訪ねてきた昔の研究仲間・山崎誓作から、”雪の結晶なんて”役にも立たない研究に国費を使ってどうするんだとなじられるが、彼の口から出てくるのは研究に対する純粋な気持ちばかり。初めはあまりこの研究に乗り気じゃなかった山崎も、昔話なんかで盛り上がった勢いもあってか、気が付くと雪の実験に加わっていたりする。なんだかんだ言ってもやはり根は研究者、中谷の純粋な探究心に吸い寄せられる。 アメリカの大学に在籍していた事を自慢げに大きな顔していた彼だったが、一流の大学に行くには行ったが下働きのようなことばかりで力及ばず志なかばで戻ってきた事を涙混じりに打ち明ける。そんな彼のふとしたアイデアから実験は壁をブレイクし遂に成功へと至る。研究室といっても事務室みたいな部屋が舞台であって、実験のシーンなんかがあるわけではない。離れの低温実験室での成功は言葉で知るだけで目には出来ないのだが、最後照明が落ち、壁の真ん中にある大きな出窓の中のスペースがぼんやりと明らむと、結晶を作るための実験装置と防寒着を着込み顕微鏡を覗き込んでいる実験者の姿が浮かび上がる。幻想的で印象的な終わり方。 もちろんこれは成功譚を伝えたいわけではなく、純粋に何かを追い求める科学者の姿なんかを見せたかったのだと思うけど、学生達と教授が実験についてのそれとない会話の中でなるほどなと思ったのがこれ。「出来る事を証明するより、出来ない事を証明するのが難しい。」 出来る事を証明するのは終わりがあるけど、出来ない事を証明するのは終わりがないからね。出来ないという事を証明する為には、いろいろなやり方で”出来ないという事を”試していくんだけど、300回目にふと出来てしまったりするらしい。そういう経験を知ってるから、その逆の出来る事を証明する時にはあきらめずにがんばり続けられるのだと。”出来ない事を証明する”というのが、面白いよね。なんか高校数学の難しい証明問題みたい。まぁ、人生は答えの出ない数学みたいなもんだけど(なんちって)。
笹野鈴々音さんはグリングで既に見てるから驚かないけど、まださらに隠し玉がいようとは! 風琴工房のブログで宮嶋美子さんの顔は見て知っていたが、まさかこんなにちっちゃな方だとは。笹野さんと並ぶと小学生二人状態。かわいい顔してるから静かな演技かと思いきやルックスからは想像つかないおてんばな役でパンチのある演技。笹野さんと二人してスモール・ダイナマイト。普通な宮嶋さんも見てみたい。 もう一人の女優・松岡洋子さんは良く出来た妻の役だったからはじけた演技は見られなかったけど、これはこれで和服が良く似合ってて意外とぴったりの役だったかも。この劇団、面白い女優三人も抱えてるから今後この三人をどう使うのかというのがこの劇団見る時の楽しみの1つになりそう。 男性陣は、バズノーツ・増田理さんとグリング・杉山文雄さんの客演陣2人が良かった。一見陽のあたる表世界で活躍してるように思われていながら、実際は苦い思いをしていた男を渋く演じた増田さん。何かの為とかではなく純粋な探究心で淡々と実験に打ち込む教授を独特の優しいトーンで演じた杉山さん。安心して見れた。 良く考えれば史実に基づいてオリジナルの脚本を起こすというのは数少ないし(原作があって脚本化するのは良くあるけど)、小劇場らしくない普通に真面目な演劇(お芝居というより演劇という感じ)というのが以外と新鮮に感じた。こういうのをすんなりやれるって事は力のある証拠だと思う。史実物以外にどういうのをやっているのか興味あるし、次の公演が楽しみだ。


●風琴工房  http://www.windyharp.org/
●グリング  http://www.gring.info/



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