明日図鑑「岸辺の亀とクラゲ」@THEATER/TOPS

ワンルームマンションの202号室が舞台。半同棲の女教師とサラリーマンのカップル。近所のスーパーで目が合った万引きおばさん。部屋を間違え入り込んで来た酔っぱらいのおやじ。一つ上の階に住むそのおやじと同棲していたキャバクラ嬢は女教師の10年前の教え子だった。単なる偶然かと思いきや、そこからゆっくりと忍び寄る復讐劇。段々とあらわになるそれぞれの関係と過去。人に迷惑をかけている事をなんとも思わない、、というよりも気付いてない女教師の勘違いと被害妄想。
昨年の夏、三鷹市芸術文化センターでやった前作品「爛漫」は人情味のあるさびしくも暖かい話で笑いの壺にもはまって楽しく見たのだが、今回はなんかコンパクト&クールで、しーん、、、と見入る事の多いお芝居だった。笑いの部分も少なく、やっても上滑りしててあまり笑えず、正直睡魔に襲われた。時間は100分ぐらい? 短め。急展開する後半、カタルシスを感じる事無く「え、何?」突き放された感じで終わる。落ちもピンと来る事なく消化不良。小品に終わってしまった感は否めない。時間不足で本来の完成度に到達しないまま公演を迎えてしまったのではとかんぐりを感じるような脚本だった。やはり牧田明宏さんには地味で人情的で悲しい中にもちょっとした幸せを見出すようなそんな話が一番だなぁと思った。主宰の牧田さんが、ワンポイントで自分のお芝居に出演するのはいつもの通り。今回はどもりがちに話すどことなく怪しい教師役。うまいんだけどリアルに気持ち悪かった。山口奈緒子さんは、利用出来るものは利用するみたいな現代を象徴するような醒めた女性の役をさらっとこなす。前回の天然ぼけな役も良かったけど、今日のクールな役も決して悪くない。独特の低音ノイズ混じりの声も今日の役に底気味悪い迫力を付加していた。谷川昭一朗はもう見飽きた。同じに見える。芝居がだいたい予想の範囲内。うまいとは思うけどやはり芝居臭さが鼻についた。サラリーマンの人、なんか見た事あるけどずっと思い出せず、終わってからパンフの”SHAMPOO HAT”の文字見て思い出した。野中隆光さん。前に「事件」で硬派な刑事役やってた人だ。先に帰宅した彼が、顔に似合わずていねいに彼女の洗濯物(ブラジャーなんかも)をたたむ姿が笑えた。
演出で面白いと思った点が1つ。姿が見えない玄関での訪問者とのちょっと長めの会話(声だけが聞こえてくる)。体が少し隠れるベランダでのやりとり。こちらに背中向けた男と向き合っている彼女(背が彼より低いから顔が見えない)との会話。壁際でこちらに顔見せずに携帯でひそひそ話したり。つまり、わざと表情や身振りを見せないような演出を意識的にやっていた。どんな顔をしているのか客に想像を働かせる為なのか、それとも顔を見せない事で、やる方も見てる方も声に集中させようとしていたのだろうか(声で細やかなニュアンスを表現する、声から気持ちや表情を読み取る)。見てる方としてはちょっともどかしいが、見えない事によって見ようという強い力が働いていたかも。


●明日図鑑  http://www.ashitazukan.com/
The SHAMPOO HAT  http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/main-2.html



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