チェルフィッチュ「目的地」 @こまばアゴラ劇場


自由席だったので早めに会場に向かったら1時間も前に着いてしまった。当日券の客が階段の上の方まで並んでてさすが注目の劇団だなぁと思いながら、となりのコンビニで時間つぶしに軽く夕食を済ませる。10分ほどで食事を済ませ受付の近くで待ってると、なにやら来た人にカードを渡している。行ってみると整理番号を配布していた。なんだ、そういうシステムなの。立て看板の1つでも置いとけばそれ読んで先に受付に行ったのに。もっといい番号取れてたのに、、、。というより、チケットにあらかじめ整理番号入れとけよ。それでも10番台だったから悔しがるほどの事でもないんだけど。さらに入場の際も手際が悪い。すれ違うにも狭いぐらいの階段なのに(1.5人ぐらいの幅?)中途半端に10名ぐらいの客を階段に上げちゃってあるもんだから、若い番号の客が来るたびに後ろの人は体狭めながらじりじり下がらせられる始末。中途半端に階段に客入れずに、下で待たせて順番に上げてけばいいだけなのに(「ニセS高原から」の時はそうやってたのに)。今日が初日ってわけでもないんだからさ。
中に入ると、イスが1つあるだけのコンクリート剥き出しの舞台。2面が壁でそこに大きなスクリーン、もう2面が客席になっている。話題になってるだけあって、席は満席。当日券の桟敷席も一杯で、当日券に並んだけど入れずに帰った人も多数いたようです。今日はチェルフィッチュ主宰・岡田利規さんと青年団平田オリザさんのアフタートークがあるから尚更だったのかも。1階のトイレに行くと、受付の所に見覚えのある人が。平田さんだ。今日はどんな話が聞けるのか。席に戻ると最前列中央に1席だけ関係者席がある事に気付く。そこが平田さんの席でした。
  暗転することもなく変化のない照明。女性が1人出てきて、友達の話を始めるのだが、その話し方に驚く、、というよりも戸惑う。これが噂の超口語体? なんか私ら観客相手に講演でもしてるかのような語りかけ口調。だいたい「えー、これから”目的地”というのを始めます。」なんていわれて話し始められてもなぁ、、、。さらにつらいのがかなりかなり遠回りでまどろっこしいセリフ。3分で言える事を、10分も15分もかけて言ってる感じ。その後何度も出てくる「〜〜の話をこれからやります。」とか「今からやるのは〜〜の話なんですけど、、、」なんていうセリフ。時々芝居の内容を補助するかのようにバックスクリーンに写しだされるテキスト。手振り見振りを少しおおげさにしたような感じの変な体の動き。睡魔を誘うぐだぐだのセリフ。会話はほとんどなくモノローグの集合体のようなお芝居。途中多少の盛り上がりはあるのだが、この手法は生理的に受け入れにくかった。初めて見れば、拒否反応が起こらない方がおかしいぐらいの違和感。岡田さんはもちろんそれをわかったうえでやってるんだろうけど、この先に一体何が見えているのだろうか? 少なくとも、エンターテイメントではないよな。どう見てもこれが楽しいとは思わないし。慣れれば面白くなるのか? 一体何を目指しているのか僕なんかにわかるはずもなく、5年先10年先にどんな評価が為されるのか楽しみにとっておきましょう。
  だんだんと眠たくなってきた所に、難波幸太さんが出てきた。この人だけは明らかに違った。動きはいいしセリフがぐだぐだでなく(余計な遠回しなテキストがなく)、絶妙な間があって聞きやすいセリフ。それまでの役者の動きとセリフに辟易としてたから尚更だったのかも。それとも、わざと彼だけ普通に近い感じに演出してあったとか? その辺はよくわからないけど、彼の演技だけは見てて気持ち良かった。
100分ほどの公演の後、アフタートーク。饒舌で楽しそうに話す平田さんと対照的に、考えながら少しずつ話すシャイな感じの岡田さん。青年団初期とチェルフィッチュが似ているといった話。アフォーダンス(Affordance)と演劇との関係の話。平田さんの引き出しの多さにはいつも驚かされる。ニュース番組のコメンテーターに呼ばれたりするのも納得。面白かったのはまずアフォーダンスの話。体の関節何箇所かに位置を測定できるマーキングをして、実際に重い箱を持ち上げた時と、下手な役者が空の軽い箱を演技で重たそうに持ち上げた時の動きを測定する。するとポイントの動きに明らかな違いがあるそうで、下手な役者に重い箱を持ち上げた時のポイントの動きを真似させることで簡単に迫真の演技が出来てしまうというわけ。その手法を使えば、芝居だけでなくダンスなんかもある程度のレベルまでは楽に到達できてしまう。まだ実際の研究は始まったばかりでこれから先の話ではあるのだけど。あとこれが一番面白くて会場大爆笑だったのだけど、青年団独特のお芝居のやりかたのきっかけのお話。演出を始めた頃に、「なんで俳優たちは私のすばらしい戯曲をこんなに下手にやるんだろう?」と思ったが、まずセリフが言いにくい事に気付きいわゆる口語体のわかりやすい自然なセリフにした。そして、そうは言っても下手な役者は下手なので、下手同士は重ねてしまえという(うそのようなほんとの話らしい)事で今の”同時多発的会話”を始めたのだそうな。さらにある時1人の役者が、こんなに普通の会話は恥ずかしいからといってくるっと後ろを向き客に背を向けてセリフを言った。客に背を向けてセリフを言うというのはそれまで考えられなかったやり方だったのだが、それが以外にもうまくいきこれがきっかけとなる。平田オリザ流のこれらのやり方の始まりは実は偶然だったのだ。だけど何故うまくいったかを考えた時に、意識を分散させる事で無駄な力が抜け自然ないい演技が出来るという結論に至り、その後は効果を確信した上で積極的に手法として使うようになったのだ。要は柔軟なんだろうね、平田さんって。岡田さんの手法も意識を分散させて無駄な力を抜く為ではあるみたいだね。誰かが平田チルドレンなんて事も言ってたし、自分でも平田さんの影響が大きいと言ってるし。岡田さんが主役で話を振るんだけど、気が付くと平田オリザトークショーになっちゃってて内容の濃さもすごいけど、ホントに話が流暢で聞きほれます。トークを聞いて岡田さんの目指すものを少しは知ったから結論を出すのは次の公演を見てからでも遅くはないかな。今となっては遅いのだがNibroll「三年二組」の公演の時の、チェルフィッチュ岡田利規さんとニブロール矢内原美邦さんのアフタートークを聞き逃した事が悔やまれる。


チェルフィッチュ http://chelfitsch.net/
  ↑岡田さんの”演劇論”が書かれてあります。

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